立ち退き裁判例

参考となる事例

 

1 賃料の滞納と契約解除

   裁判所  東京地方裁判所

   判決年月日  平成17830

   事実経過  

・建物賃貸借の事例

賃料月額約146万円(管理費等含む)

9か月間で約979万円滞納となったため、大家側が契約を解除して立ち退き請求訴訟を提起した

入居者側としては、滞納家賃は少しずつ支払っていることや、今後は他から借り入れて全額を払える見通しであることから信頼関係は続いているので契約解除はできず、立ち退く必要はないとの立場であった

   裁判所の判断

 賃料が滞納となっていても賃貸借契約を解除するためには信頼関係が失われている必要があるものの9か月の間、支払い少しずつなされていたが滞納が恒常化していたことや、それ以前にも支払いの遅延たびたび生じていたことから、信頼関係は失われている判断して、賃貸借契約の解除を認め、立ち退きを命じた。

 

2 「賃料の滞納が生じた場合、催告なしで解除できる」という契約条項は有効か

  裁判所  最高裁判所

  判決年月日  昭和431121

  事実経過  

     建物賃貸借の事例

家賃の滞納が5ヶ月間続いたので、大家側が賃貸借契約解除通知を送付した。

法律上、契約を解除するためには事前に催告(督促)をしておく必要があるが、賃貸借契約書に、「1月分の家賃の滞納があった場合、催告なしで直ちに契約を解除できる」という条項が含まれていたので、大家側は、催告を経ずに解除した。

このような解除認められるかが問題となった事案

  裁判所の判断

    「1月分の家賃の滞納があった場合、催告なしで直ちに契約を解除できる」という条項は、賃貸借契約が当事者間の信頼関係を基礎とする継続的な法律関係であることに鑑みれば、賃料の滞納が生じ、そのため契約を解除するに当たって催告をしなくてもあながち不合理とはいえない事情がる場合には、無催告で解除権を行使することが許される旨を定めた約定であると解するのが相当である。

賃料の滞納が5ヶ月も生じていたのであるから、他に特段の事情の認められない本件においては、その条項に基づき催告を経ずに解除することができる

 

3  多国籍料理の店舗として賃貸したが、中華料理店として使用され、賃料の滞納も加わって解除が認められた事例

  裁判所  東京地方裁判所

  判決年月日  平成19330

事実経過

店舗賃貸借事例

契約書上、使用目的「多国籍料理」の店舗となっていたが、実際には中華料理店として使用されてしまった。

賃料の滞納も生じてた。

使用目的については、かつて入居者側がテナントへの入居を申し込んだとき、中華料理店の営業をおこなうことを希望していたが、大家側は、煙や油が大量に出ることを懸念してこれを拒んでいた。その後入居者側は、本格的な中華料理店ではなく、刺身なども出無国籍料理店とすることを提案し、入居が決定したが、契約書上、使用目的を「多国籍料理店舗」とすることになったという経緯があった。

  裁判所の判断

上記のような経緯によれば、契約書において使用目的を「多国籍料理店舗としたのは、当初要望があったような本格的な中華料理のみを提供する店舗を禁止するものであったいえるそれにもかかわらず中華料理店として使用した入居者側には用法遵守義務違反がある。さらに賃料の滞納も併せれば、信頼関係も失われたといえ、契約の解除と立退き請求を認めるべきである。