未払い残業代警備員の場合

ちょっとわかりにくい!?警備員の労働時間

警備員と一口にいってもいろんな警備業務がありますね。現金の輸送の警備や銀行の警備などは常に緊張と隣り合わせだと思います。
そして、警備員の仕事の特徴には拘束時間が長いことが挙げられます。12時間や中には24時間拘束するようなものもありますが、その場合は間に仮眠時間や待機時間が含まれていることもあります。
このように業務内容や拘束時間が多岐に渡る警備員の仕事には、時間外労働の例外が用意されています。この例外が、警備業界に未払い残業代が多い一因なのかもしれません。


警備員残業代のルール、業務内容によっては残業代が出ないことがある?

警備員の仕事には、残業代が出る業務と出ない業務があります。
原則として、労働基準法第32条では、1日8時間、1週間40時間を超えて労働者を勤務させてはならない、と決められています。
しかし、警備業務でも、「監視又は断続的労働」に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたものであれば、労働時間や休日等の規定が適用されません(労働基準法第41条)。
それでは、「監視又は断続的労働」とはどのようなものでしょうか?

「監視」

監視業務にあたるかどうかは、主に以下の項目にあてはまるかどうかということになります。

  1. 一定部署における監視業務
  2. 身体的な疲労や精神的な緊張が少ない

具体的にどういう業務かといえば、

  • ビルの警備員
  • 守衛
  • 軽微な警備作業
  • マンションの管理人

などです。当てはまらないものを見てみたほうがわかりやすいかもしれませんね。
以下は監視にあてはまらない業務です。

  • ブラント等の計器類の監視業務
  • 交通関係の監視業務
  • 危険・有害な場所での警備作業

あてはまらない業務というのは、身体的疲労や精神的緊張がある、と判断されるような仕事だとわかりますね。

「断続的労働」

断続的労働にあたるかどうかは、主に以下の項目にあてはまるかどうかということになります。

  1. 作業時間が間欠的に行われるもの
  2. 手待ち時間が多い業務に従事するもの


つまり、宿直など定期巡回をするような業務のことを指します。
そして、単に「監視又は断続的労働」に当てはまれば残業代を支給しなくていい、というわけでなく、もう一つ条件がありましたね。
行政官庁(労働基準監督署)の許可が必要ということです。
使用者が許可を得てはじめて、残業代としての割増賃金を支給しなくていいということになります。ちなみに、残業代としての割増賃金が支給されないだけで、もちろん賃金自体は発生します。


仮眠時間・待機時間の取扱は?

警備の仕事には、仮眠時間や待機時間が含まれていることが多いですね。
この仮眠時間や待機時間は労働時間に含まれるのか?ということが問題になります。これが労働時間に含まれないとなれば、拘束時間はとっても長いけど、かなり少ない労働時間になってしまうということもあります。
これにはいくつか裁判例等もありますが、労働時間として認定されるための主なポイントは、持ち場を離れることができたか?指揮監督下にあったか?ということになります。
指揮監督下とは、直接にその場に上司とともに居なくても、常に呼び出しを受けたら出動できるような体制をしていなければならなかった、などの場合も認められます。携帯電話や無線などでの呼び出しに対応する必要があるような待機時間であれば、労働時間となる可能性が高いです。また、着替えることが許されなかった、や敷地外(決められた場所以外)に出ることができなかった、などという待機時間の場合も労働時間と認められます。
これは、仮眠時間も一緒ですね。仮眠時間中も、呼び出し等があれば行かなければならなかったという場合や、交代要員がいなかった場合などは、労働時間としてみなされた例があります。仮眠時間や待機時間が労働時間としてみなされれば、かなり金額が変わってくると思います。
警備員の場合は、業務内容によって、残業代が支給されるか、労働時間として認められるか、ということが個別に判断されます。
今は支給されていないけど、本来はもらえるんじゃないか?と少しでも疑問に思った方は、弁護士に相談をしてきちんと計算してみましょう。


残業代未払い請求訴訟の判例


残業代計算方法